むもうだん ――よこやまたいぞうにささぐ――
無毛談 ――横山泰三にさゝぐ――

冒頭文

私のところには二人ねるだけのフトンしかないのである。だから、お客様を一人しかとめられない。 先日、酔っ払って、このことを忘れて、横山隆一、泰三の御兄弟を深夜の拙宅へ案内した。気がついた時は、もう、おそい。もっとも、兄弟だから、いゝようなものだ。第一、こんなにバカバカしく仲のよい兄弟というものは天下無類で、それに二人合せたって一人前ぐらいの容積しかないのだから、よかろうというものだ。

文字遣い

新字新仮名

初出

「オール読物 第三巻第五号」1948(昭和23)年5月1日

底本

  • 坂口安吾全集 06
  • 筑摩書房
  • 1998(平成10)年5月22日