しょうぎのおに |
将棋の鬼 |
冒頭文
将棋界の通説に、升田は手のないところに手をつくる、という。理窟から考えても、こんなバカな言い方が成り立つ筈のものではない。 手がないところには、手がないにきまっている。手があるから、見つけるのである。つまり、ほかの連中は手がないと思っている。升田は、見つける。つまり、升田は強いのである。 だから、升田が手がないと思っているところに手を見つける者が現れゝば、その人は升田に勝つ、と
文字遣い
新字新仮名
初出
「オール読物 第三巻第四号」1948(昭和23)年4月1日
底本
- 坂口安吾全集 06
- 筑摩書房
- 1998(平成10)年5月22日