モンアサクサ
モンアサクサ

冒頭文

戦争中の浅草は、ともかく、私の輸血路であった。つまり、酒がのめたのである。 「染太郎」というオコノミ焼が根城であったが、今銀座へ越している「さんとも」というフグ料理、これは大井広介のオトクイの家、それから吉原へのして、「菊屋」と「串平」、酔いつぶれて帰れなくなると、吉原へ泊るという、あのころは便利であった。 あのころ「現代文学」の同人会は染太郎でやるのが例で、ともかく、戦禍で浅草が焼け

文字遣い

新字新仮名

初出

「ナイト 創刊号」ナイト、1948(昭和23)年1月25日

底本

  • 坂口安吾全集 06
  • 筑摩書房
  • 1998(平成10)年5月22日