げんだいとは?
現代とは?

冒頭文

伝統の否定と一口に言うけれども、伝統は全て否定しなければならぬというものではなくて、すでに実質を失いながら虚妄の空位を保って信仰的な存在をつゞけていることが反省され否定されなければならぬというだけだ。実質あるものは否定の要なく、又、伝統に限らず、全て、実質を失いながら虚妄の権威を保つものは、反省され、否定される必要があるだけだ。 時代の流行というものは、常に多分に、伝統と同じぐらい空虚な

文字遣い

新字新仮名

初出

「新小説 第三巻第一号」1948(昭和23)年1月1日

底本

  • 坂口安吾全集 06
  • 筑摩書房
  • 1998(平成10)年5月22日