しゅっけものがたり
出家物語

冒頭文

幸吉の叔母さんに煙草雑貨屋を営んでいる婆さんがあって、御近所に三十五の品の良い未亡人がいるから、見合いをしてみなさい、と言う。インテリで美人で、三十ぐらいにしか見えない。会社の事務員をして二人の子供を女手で育てゝいるが、浮いた噂もない。幸吉にはモッタイない人だけれども、あるとき叔母さんに、事務員じゃ暮しが苦しいから、オデン屋の小さい店がもちたい、と言った。それで、ふと気がついて、 「私の甥が

文字遣い

新字新仮名

初出

「オール読物 第三巻第一号」1948(昭和23)年1月1日

底本

  • 坂口安吾全集 06
  • 筑摩書房
  • 1998(平成10)年5月22日