にほんぶんかしかん |
日本文化私観 |
冒頭文
一 「日本的」ということ 僕は日本の古代文化に就(つい)て殆んど知識を持っていない。ブルーノ・タウトが絶讃する桂離宮も見たことがなく、玉泉も大雅堂も竹田(ちくでん)も鉄斎も知らないのである。況(いわ)んや、秦蔵六(はたぞうろく)だの竹源斎師など名前すら聞いたことがなく、第一、めったに旅行することがないので、祖国のあの町この村も、風俗も、山河も知らないのだ。タウトによれば日本に於ける最も俗悪な
文字遣い
新字新仮名
初出
「現代文学 第五巻第三号」1942(昭和17)年2月28日
底本
- 坂口安吾全集14
- ちくま文庫、筑摩書房
- 1990(平成2)年6月26日