べんきょうき
勉強記

冒頭文

大震災から三年過ぎた年の話である。昨今隆盛を極めているアパートメントの走りがそろそろ現れた頃で、又青年子女が「資本論」という魔法使いの本に憑(つ)かれだした頃でもあった。生活の形式にも内容にも大きな転換期が訪れようとしていた。「近代」が、また「今日」が、始まろうとしていたのである。 涅槃(ねはん)大学校という誰でも無試験で入学できる学校の印度哲学科というところへ、栗栖按吉(くりすあんきち

文字遣い

新字新仮名

初出

「文体 第二巻第五号(五月増大号)」1939(昭和14)年5月1日

底本

  • 坂口安吾全集3
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1990(平成2)年2月27日