ひだのかお
飛騨の顔

冒頭文

日本で、もう一度ノンビリ滞在してあの村この町を歩いてみたいと思う土地は、まず飛騨である。五月ぐらいの気候のよいときが望ましいが、お祭のシーズンもよいかも知れぬ。京都はギオンの夏祭りをのぞいて多くの主要な祭が春の二ヶ月間ぐらいに行われるから祭のシーズンというものがあるが、ヒダはそうでもないらしいから、まとめてお祭を見るわけにはいかないようだ。 お祭りという隠居じみたことをなぜ持ちだしたかと

文字遣い

新字新仮名

初出

「別冊文藝春秋 第二三号」1951(昭和26)年9月1日

底本

  • 坂口安吾全集 12
  • 筑摩書房
  • 1999(平成11)年1月20日