だらくろん
堕落論

冒頭文

半年のうちに世相は変った。醜(しこ)の御楯(みたて)といでたつ我は。大君のへにこそ死なめかへりみはせじ。若者達は花と散ったが、同じ彼等が生き残って闇屋(やみや)となる。ももとせの命ねがはじいつの日か御楯とゆかん君とちぎりて。けなげな心情で男を送った女達も半年の月日のうちに夫君の位牌(いはい)にぬかずくことも事務的になるばかりであろうし、やがて新たな面影を胸に宿すのも遠い日のことではない。人間が変っ

文字遣い

新字新仮名

初出

「新潮 第四十三巻第四号」1946(昭和21)年4月1日

底本

  • 坂口安吾全集14
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1990(平成2)年6月26日