ぞくだらくろん
続堕落論

冒頭文

敗戦後国民の道義頽廃(たいはい)せりというのだが、然らば戦前の「健全」なる道義に復することが望ましきことなりや、賀すべきことなりや、私は最も然らずと思う。 私の生れ育った新潟市は石油の産地であり、したがって石油成金の産地でもあるが、私が小学校のころ、中野貫一という成金の一人が産をなして後も大いに倹約であり、停車場から人力車に乗ると値がなにがしか高いので万代橋(ばんだいばし)という橋の袂(

文字遣い

新字新仮名

初出

「文学季刊 第二号(冬季号)」1946(昭和21)年12月1日

底本

  • 坂口安吾全集14
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1990(平成2)年6月26日