かんぞうせんせい
肝臓先生

冒頭文

終戦後二年目の八月十五日のことであるが、伊豆の伊東温泉に三浦按針祭というものが行われて、当日に限って伊東市は一切の禁令を解除し、旅館や飲食店はお酒をジャン〳〵のませてもよいし、スシでもドンブリでも何を売ってもよろしい、という地区司令官の布告がでたという。 戦争以来伊東へ疎開している彫刻家のQから速達がきて、右のような次第で、当温泉は全市をあげて当日を手グスネひいて待ちかまえて、すでに今か

文字遣い

新字新仮名

初出

「文学界 第四巻第一号」1950(昭和25)年1月1日

底本

  • 坂口安吾全集 08
  • 筑摩書房
  • 1998(平成10)年9月20日