かぜとひかりとはたちのわたしと
風と光と二十の私と

冒頭文

私は放校されたり、落第したり、中学を卒業したのは二十の年であった。十八のとき父が死んで、残されたのは借金だけということが分って、私達は長屋へ住むようになった。お前みたいな学業の嫌いな奴が大学などへ入学しても仕方がなかろう、という周囲の説で、尤(もっと)も別に大学へ入学するなという命令ではなかったけれども、尤もな話であるから、私は働くことにした。小学校の代用教員になったのである。 私は性来

文字遣い

新字新仮名

初出

「文芸 第四巻第一号(新春号)」1947(昭和22)年1月1日

底本

  • 坂口安吾全集4
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1990(平成2)年3月27日