よながひめとみみお
夜長姫と耳男

冒頭文

オレの親方はヒダ随一の名人とうたわれたタクミであったが、夜長の長者に招かれたのは、老病で死期の近づいた時だった。親方は身代りにオレをスイセンして、 「これはまだ二十の若者だが、小さいガキのころからオレの膝元に育ち、特に仕込んだわけでもないが、オレが工夫の骨法は大過なく会得している奴です。五十年仕込んでも、ダメの奴はダメのものさ。青笠(アオガサ)や古釜(フルカマ)にくらべると巧者ではないかも知

文字遣い

新字新仮名

初出

「新潮 第四九巻第六号」1952(昭和27)年6月1日

底本

  • 坂口安吾全集 12
  • 筑摩書房
  • 1999(平成11)年1月20日