にんげんあくのそうぞう
人間悪の創造

冒頭文

若い頃、よく衆生の恩など言ふ語を教はつたものだが、その用語例に包含させては、ちよつと冷淡過ぎる氣もする。併し誰でも讀んで居り、又その中の何分の一かゞ、ちよつとも讀まないでゐて、而も讀んだ世間から押しよせて來る知識によつて、一體の智慧の水準の高まつてゐると言ふことは珍しく言ふ程のことはない。明治以後さういふ影響を殘した書物を數へ立てれば、きりもないが、その十種には入らなくても、最讀まれた五十種位に數

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「シャーロツク・ホームズ全集 月報」第10號、1952(昭和27)年3月

底本

  • 折口信夫全集 第廿七巻
  • 中央公論社
  • 1968(昭和43)年1月25日