ぶんしのせいかつ なつめそうせきし-しゅうにゅう-いしょくじゅう-ごらく-しゅみ-あいぞう-にちじょうせいかつ-しっぴつのぜんご
文士の生活 夏目漱石氏-収入-衣食住-娯楽-趣味-愛憎-日常生活-執筆の前後

冒頭文

私が巨万の富を蓄えたとか、立派な家を建てたとか、土地家屋を売買して金を儲(もう)けて居るとか、種々な噂(うわさ)が世間にあるようだが、皆嘘(うそ)だ。 巨万の富を蓄えたなら、第一こんな穢(きたな)い家に入って居はしない。土地家屋などはどんな手続きで買うものか、それさえ知らない。此家だって自分の家では無い。借家である。月々家賃を払って居るのである。世間の噂と云うものは無責任なものだと思う。

文字遣い

新字新仮名

初出

「大阪朝日新聞」1914(大正3)年3月22日

底本

  • 筑摩全集類聚版 夏目漱石全集 10
  • 筑摩書房
  • 1972(昭和47)年1月10日