わたしのけいかしたがくせいじだい
私の経過した学生時代

冒頭文

一 私の学生時代を回顧して見ると、殆(ほと)んど勉強と云う勉強はせずに過した方である。従ってこれに関して読者諸君を益するような斬新(ざんしん)な勉強法もなければ、面白い材料も持たぬが、自身の教訓の為め、つまり這麼(こんな)不勉強者は、斯(こ)ういう結果になるという戒(いましめ)を、思い出したまま述べて見よう。 私は東京で生れ、東京で育てられた、謂(い)わば純粋の江戸ッ子である。明瞭

文字遣い

新字新仮名

初出

「中学世界」1909(明治42)年1月1日

底本

  • 筑摩全集類聚版 夏目漱石全集 10
  • 筑摩書房
  • 1972(昭和47)年1月10日