がんじつ
元日

冒頭文

元日を御目出(おめで)たいものと極(き)めたのは、一体何処(どこ)の誰か知らないが、世間が夫(そ)れに雷同(らいどう)しているうちは新聞社が困る丈(だけ)である。雑録でも短篇でも小説でも乃至(ないし)は俳句漢詩和歌でも、苟(いやし)くも元日の紙上にあらわれる以上は、いくら元日らしい顔をしたって、元日の作でないに極(きま)っている。尤(もっと)も師走(しわす)に想像を逞(たくま)しくしてはならぬと申

文字遣い

新字新仮名

初出

「朝日新聞」1910(明治43)年1月1日

底本

  • 筑摩全集類聚版 夏目漱石全集 10
  • 筑摩書房
  • 1972(昭和47)年1月10日