きしゅたんじょうとうぶゆのしんこうと
貴種誕生と産湯の信仰と

冒頭文

一 貴人の御出生といふ事について述べる前に、貴人の誕生、即「みあれ」といふ語(ことば)の持つ意味から、先づ考へ直して見たいと思ふ。 私は、まづ今日の宮廷の行事の、固定した以前の形を考へさせて貰はうと思ふ。有職故実の学者たちの標準は、主として、平安朝以来即、儒風・方術の影響を受けた後の様式にある様である。尤、此期に入つて、記録類が殖えて来たからではあるが、私は前期王朝のまだ其々の伝承に、信仰的根

文字遣い

新字旧仮名

初出

「国学院雑誌 第三十三巻第十号」1927(昭和2)年10月

底本

  • 折口信夫全集 2
  • 中央公論社
  • 1995(平成7)年3月10日