くちくされんとするぶんじん |
| 駆逐されんとする文人 |
冒頭文
▲余の住ってる町は以前は組屋敷らしい狭い通りで、多くは小さい月給取の所謂勤人ばかりの軒並であった。余の住居は往来から十間奥へ引込んでいたゆえ、静かで塵埃の少ないのを喜んでいた。処が二三年前市区改正になって、表通りを三間半削られたので往来が近くなった。道路が広くなって交通が便利になったお庇に人通りが殖えた。自働車が盛んに通るようになった。自然商店が段々殖えて来て、近頃は近所の小さな有るか無いかのお稲
文字遣い
新字新仮名
初出
「現代」1913(大正2)年5月
底本
- 魯庵の明治 山口昌男、坪内祐三編
- 講談社文芸文庫、講談社
- 1997(平成9)年5月9日