ぶんめいこくにはかならずちしきあるこうとうゆうみんあり |
文明国には必ず智識ある高等遊民あり |
冒頭文
遊民は如何なる国、何れの時代にもある。何所の国に行っても全国民が朝から晩まで稼いで居るものではない。けれども、国に遊民のあるは決して憂うるに足らぬことだ。即ち、これあるは其の国の余裕を示す所以で、勤勉な国民に富んで居るのは、見ように依ってはその国が貧乏だからである。遊民の多きを亡国の兆(ちょう)だなどゝ苦労するのは大きな間違いだ。文明の進んだ富める国には、必ず此の遊民がある。是れ太平の祥であると云
文字遣い
新字新仮名
初出
底本
- 魯庵の明治 山口昌男、坪内祐三編
- 講談社文芸文庫、講談社
- 1997(平成9)年5月9日