かいじんじゅうまんかん (まるぜんえんじょうのき)
灰燼十万巻 (丸善炎上の記)

冒頭文

十二月十日、珍らしいポカ〳〵した散歩日和で、暢気に郊外でも徜徉(ぶらつ)きたくなる天気だったが、忌でも応でも約束した原稿期日が迫ってるので、朝飯も匆々に机に対った処へ、電報! 丸善から来た。朝っぱらから何の用事かと封を切って見ると、『ケサミセヤケタ。』 はて、解らん。何の事ッたろう。何度読直しても『今朝店焼けた』としか読めない。金城鉄壁ならざる丸善の店が焼けるに決して不思議は無

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 魯庵の明治 山口昌男、坪内祐三編
  • 講談社文芸文庫、講談社
  • 1997(平成9)年5月9日