せんそうからきたいきちがい |
戦争からきた行き違い |
冒頭文
十一日の夜床に着いてからまもなく電話口へ呼び出されて、ケーベル先生が出発を見合わすようになったという報知を受けた。しかしその時はもう「告別の辞」を社へ送ってしまったあとなので私(わたし)はどうするわけにもいかなかった。先生がまだ横浜のロシアの総領事のもとに泊まっていて、日本を去ることのできないのは、まったく今度の戦争のためと思われる。したがって私にこの正誤を書かせるのもその戦争である。つまり戦争が
文字遣い
新字新仮名
初出
底本
- 硝子戸の中
- 角川文庫、角川書店
- 1954(昭和29)年6月10日