イズムのこうか
イズムの功過

冒頭文

大抵のイズムとか主義とかいうものは無数の事実を几帳面(きちょうめん)な男が束(たば)にして頭の抽出(ひきだし)へ入れやすいように拵(こしら)えてくれたものである。一纏(ひとまと)めにきちりと片付いている代りには、出すのが臆劫(おっくう)になったり、解(ほど)くのに手数がかかったりするので、いざという場合には間に合わない事が多い。大抵のイズムはこの点において、実生活上の行為を直接に支配するために作ら

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 漱石文明論集
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1986(昭和61)年10月16日