『とうようびじゅつずふ』
『東洋美術図譜』

冒頭文

偉大なる過去を背景に持っている国民は勢いのある親分を控えた個人と同じ事で、何かに付けて心丈夫(こころじょうぶ)である。あるときはこの自覚のために驕慢(きょうまん)の念を起して、当面の務(つとめ)を怠(おこた)ったり未来の計を忘れて、落ち付いている割に意気地(いくじ)がなくなる恐れはあるが、成上(なりあが)りものの一生懸命に奮闘する時のように、齷齪(あくせく)とこせつく必要なく鷹揚自若(おうようじじ

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 漱石文明論集
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1986(昭和61)年10月16日