ぼくのむかし
僕の昔

冒頭文

根津(ねず)の大観音(だいかんのん)に近く、金田夫人の家や二弦琴(にげんきん)の師匠や車宿や、ないし落雲館(らくうんかん)中学などと、いずれも『吾輩(わがはい)は描(ねこ)である』の編中でなじみ越しの家々の間に、名札もろくにはってない古べいの苦沙弥(くしゃみ)先生の居(きょ)は、去年の暮れおしつまって西片町(にしかたまち)へ引き越された。君、こんどの僕の家は二階があるよと丸善の手代みたように群書堆

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 吾輩は猫である(他一編)
  • 旺文社文庫、旺文社
  • 1965(昭和40)年7月10日