しきのえ
子規の画

冒頭文

余は子規(しき)の描(か)いた畫(ゑ)をたつた一枚持つてゐる。亡友の記念(かたみ)だと思つて長い間それを袋の中に入れて仕舞つて置いた。年數(ねんすう)の經(た)つに伴(つ)れて、ある時は丸(まる)で袋の所在を忘れて打ち過ぎる事も多かつた。近頃不圖(ふと)思ひ出して、あゝして置いては轉宅の際などに何處へ散逸するかも知れないから、今のうちに表具屋へ遣(や)つて懸物(かけもの)にでも仕立てさせやうと云ふ

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 漱石全集 第十七巻
  • 岩波書店
  • 1957(昭和32)年1月12日