しんしゅうこうけつじょう
神州纐纈城

冒頭文

第一回 一 土屋庄三郎は邸を出てブラブラ条坊(まち)を彷徨(さまよ)った。 高坂(こうさか)邸、馬場邸、真田(さなだ)邸の前を通り、鍛冶(かじ)小路の方へ歩いて行く。時は朧(おぼ)ろの春の夜でもう時刻が遅かったので邸々は寂しかったが、「春の夜の艶(なまめ)かしさ、そこはかとなく匂ひこぼれ、人気(ひとけ)なけれど賑かに思はれ」で、陰気のところなどは少しもない。 「

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 神州纐纈城
  • 大衆文学館、講談社
  • 1995(平成7)年3月17日