すいちゅうのとも
水中の友

冒頭文

いつまでも ものを言はなくなつた友人——。もつとも 若かつたひとり——。たゞの一度も 話をしたことのない二三行の手紙も 彼に書いたことのない私——併し 私の友情を しづかに 享けとつてゐてくれた彼を 感じる。——友人の死んだ時私は、嵐の聲を聞いた。若い世間は、手をあげて迎へるやうにはなやかに その死を讚へた——。老成した世間は、もみくしやになつた語で、澁面を表情した——。一等高さの教養を持つた人だ

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「『人間失格・櫻桃』解説」角川文庫、角川書店、1950(昭和25)年11月。「文藝 第十卷第十二號」1953(昭和28)年12月

底本

  • 折口信夫全集 第廿七巻
  • 中央公論社
  • 1968(昭和43)年1月25日