こうおのろん
好悪の論

冒頭文

鴎外と逍遙と、どちらが嗜きで、どちらが嫌ひだ。かうした質問なら、わりに答へ易いのです。でも、稍老境を見かけた私どもの現在では、どちらのよい處も、嗜きになりきれない處も、見え過ぎて來ました。それでやつぱり、かうした簡單な討論の方へ加はれさうもありません。だからまして、廣く大海を探つて一粟をつまみあげろと言つた難題には、二の脚を踏まずには居られません。さあだれが嗜きで誰が嫌ひ。そんな印象も殘さない樣な

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「日本文學講座 第十卷」1927(昭和2)年10月

底本

  • 折口信夫全集 第廿七巻
  • 中央公論社
  • 1968(昭和43)年1月25日