カーライルはくぶつかん |
カーライル博物館 |
冒頭文
公園の片隅に通りがかりの人を相手に演説をしている者がある。向うから来た釜形(かまがた)の尖(とが)った帽子を被(か)ずいて古ぼけた外套(がいとう)を猫背(ねこぜ)に着た爺(じい)さんがそこへ歩みを佇(とど)めて演説者を見る。演説者はぴたりと演説をやめてつかつかとこの村夫子(そんぷうし)のたたずめる前に出て来る。二人の視線がひたと行き当る。演説者は濁りたる田舎調子(いなかぢょうし)にて御前はカーライ
文字遣い
新字新仮名
初出
底本
- 夏目漱石全集2
- ちくま文庫、筑摩書房
- 1987(昭和62)年10月27日