EN JA
SPU_RUN(2)
SPU_RUN(2) Linux Programmer's Manual SPU_RUN(2)

名前

spu_run - SPU コンテキストを実行する

書式


#include <sys/spu.h>


int spu_run(int fd, unsigned int *npc, unsigned int *event);

 

: このシステムコールには glibc のラッパー関数は存在しない。「注意」の節を参照。

説明

spu_run() システムコールは、Cell Broadband Engine アーキテクチャを実装した PowerPC マシンで Synergistic Processor Units (SPU) にアクセスするために使用される。 fd 引き数は、 spu_create(2) が返すファイルディスクリプタで、特定の SPU コンテキストを参照する。そのコンテキストが物理 SPU に割り当てられると、 npc で渡された命令ポインタ (instruction pointer) から実行が開始される。
 
SPU コードの実行は同期的 (synchronously) に行われる、つまり SPU が実行中は spu_run() は停止 (block) する。 SPU コードの実行をメイン CPU や他の SPU と並行して行う必要がある場合は、最初に、その SPU コードを実行する新しいスレッドを、(例えば pthread_create(3) などを使って) 生成しなければならない。
 
spu_run() が返るときには、SPU のプログラムカウンタの現在値が npc に書き込まれる。これにより、連続する spu_run() の呼び出しで同じ npc ポインタを使うことができる。
 
event 引き数には、拡張ステータスコード用のバッファを指定する。 SPU_CREATE_EVENTS_ENABLED フラグ付きで SPU コンテキストが作成されると、 spu_run() が返る前に Linux カーネルによりこのバッファに拡張ステータスコードが格納される。
 
ステータスコードには以下の定数が一つ以上入る。
SPE_EVENT_DMA_ALIGNMENT
DMA (direct memory access) のアライメント・エラーが発生した。
SPE_EVENT_INVALID_DMA
無効な MFC (Memory Flow Controller) DMA コマンドを行おうとした。
SPE_EVENT_SPE_DATA_STORAGE
DMA ストレージ・エラーが発生した。
SPE_EVENT_SPE_ERROR
不正な命令が実行された。

NULL は event 引き数として有効な値である。この場合、イベントは呼び出し元のプロセスに報告されない。

返り値

成功すると、 spu_run() は spu_status レジスタの値を返す。エラーの場合、-1 を返し、 errno を下記のエラーコードのいずれかに設定する。
 
spu_status レジスタの値は、ステータスコードと SPU の stop-and-signal 命令が返す 14 ビットのコードのビットマスクで構成される。後者の 14 ビットのコードはオプションである。ステータスコードのビットマスクは下記の通りである。
0x02
SPU が stop-and-signal 命令で停止した。
0x04
SPU が halt (停止) 命令で止まった。
0x08
SPU はチャンネルのウェイト中である。
0x10
SPU はシングルステップモードであった。
0x20
SPU が不正な命令を実行しようとした。
0x40
SPU が不正なチャンネルにアクセスしようとした。
0x3fff0000
この値のマスクを適用して得られたビット値には、 stop-and-signal 命令から返されたコードが入っている。これらのビットは 0x02 ビットがセットされている場合にのみ有効である。

spu_run() がエラーを返さなかった場合、下位 8 ビットのうち 1 つ以上は常にセットされる。

エラー

EBADF
fd が有効なファイルディスクリプタでない。
EFAULT
npc が有効なポインタでない。または event が NULL 以外で、しかも無効なポインタである。
EINTR
spu_run() の実行中にシグナルが発生した。 signal(7) 参照。必要であれば、 npc の値は新しいプログラムカウンタの値に更新される。
EINVAL
fdspu_create(2) が返した有効なファイルディスクリプタでない。
ENOMEM
Memory Flow Controller (MFC) DMA により発生したページフォールトを処理するのに必要なメモリがなかった。
ENOSYS
機能が動作中のシステムで提供されていない。理由は、ハードウェアで SPU が提供されていないか、 spufs モジュールがロードされていないか、のどちらかである。

バージョン

spu_run() システムコールはカーネル 2.6.16 で Linux に追加された。

準拠

このシステムコールは Linux 固有であり、 PowerPC アーキテクチャでのみ実装されている。このシステムコールを使ったプログラムは移植性がない。

注意

glibc はこのシステムコールに対するラッパー関数を提供していない。 syscall(2) を使うこと。ただし、 spu_run() はより抽象度の高い SPU へのインタフェースを実装するライブラリから利用されることを意図したものであり、通常のアプリケーションから使用は意図されていない。推奨のライブラリについては http://www.bsc.es/projects/deepcomputing/linuxoncell/ を参照のこと。

以下は、簡単な 1 命令の SPU プログラムを spu_run() システムコールを使って実行させる例である。
 

#include <stdlib.h>
#include <stdint.h>
#include <unistd.h>
#include <stdio.h>
#include <sys/types.h>
#include <fcntl.h>


#define handle_error(msg) \
do { perror(msg); exit(EXIT_FAILURE); } while (0)


int main(void)
{
int context, fd, spu_status;
uint32_t instruction, npc;


context = spu_create("/spu/example-context", 0, 0755);
if (context == -1)
handle_error("spu_create");


/* write a 'stop 0x1234' instruction to the SPU's
* local store memory
*/
instruction = 0x00001234;


fd = open("/spu/example-context/mem", O_RDWR);
if (fd == -1)
handle_error("open");
write(fd, &instruction, sizeof(instruction));


/* set npc to the starting instruction address of the
* SPU program. Since we wrote the instruction at the
* start of the mem file, the entry point will be 0x0
*/
npc = 0;


spu_status = spu_run(context, &npc, NULL);
if (spu_status == -1)
handle_error("open");


/* we should see a status code of 0x1234002:
* 0x00000002 (spu was stopped due to stop-and-signal)
* | 0x12340000 (the stop-and-signal code)
*/
printf("SPU Status: 0x%08x\n", spu_status);


exit(EXIT_SUCCESS);
}

関連項目

close(2), spu_create(2), capabilities(7), spufs(7)

この文書について

この man ページは Linux man-pages プロジェクトのリリース 3.51 の一部である。プロジェクトの説明とバグ報告に関する情報は http://www.kernel.org/doc/man-pages/ に書かれている。
2012-08-05 Linux