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名前
ld - GNU リンカ書式
- ld
-
[
-o
output] objfile...
[ -Aarchitecture] [ -b input-format] [ -Bstatic] [ -Bdynamic] [ -Bsymbolic] [ -c commandfile] [ --cref] [ -d| -dc| -dp]
[ -defsym symbol = expression] [ -e entry] [ -embedded-relocs] [ -E] [ -export-dynamic] [ -f name] [ --auxiliary name] [ -F name] [ --filter name] [ -format input-format] [ -g] [ -G size] [ -h name] [ -soname name] [ --help] [ -i] [ -lar] [ -Lsearchdir] [ -M] [ -Map mapfile] [ -m emulation] [ -n| -N] [ -noinhibit-exec] [ -no-keep-memory] [ -no-warn-mismatch] [ -oformat output-format] [ -R filename] [ -relax] [ -r| -Ur] [ -rpath directory] [ -rpath-link directory] [ -S] [ -s] [ -shared] [ -sort-common] [ -split-by-reloc count] [ -split-by-file] [ -T commandfile] [ -Ttext textorg] [ -Tdata dataorg] [ -Tbss bssorg] [ -t] [ -u sym] [ -V] [ -v] [ --verbose] [ --version] [ -warn-common] [ -warn-constructors] [ -warn-multiple-gp] [ -warn-once] [ -warn-section-align] [ --whole-archive] [ --no-whole-archive] [ --wrap symbol] [ -X] [ -x]
説明
ld は複数のオブジェクトファイルや書庫 (archive) ファイルを結合し、それらのデータをリロケートして、シンボルの参照をまとめる。新たな実行プログラムをコンパイルして作成する作業の最終ステップは、多くの場合 ld の呼び出しとなる。オプション
コマンドラインオプションのあまりの多さに怖気づくかもしれないが、実際の作業で指定されるオプションは、ほとんどの場合少ない。例として ld の良く用いられる例、サポートされている標準的な Unix システムで標準 Unix のオブジェクトファイルを作成する場合を考えよう。このようなシステムで hello.o ファイルをリンクする作業は以下のようになる。- -A architecture
-
ld のこのリリースでは、このオプションは Intel 960 アーキテクチャのファミリに対してのみ意味を持つ。このファミリ向けに設定された
ld では、
architecture 引数は 960 ファミリのメンバーを示す 2 文字の名前のどれかを指定する。このオプションは出力ターゲットを指定し、入力ファイルにある非互換な命令全てに対して警告メッセージを表示する。またリンカが書庫ライブラリを検索する方法を変更し、指定されたアーキテクチャに特有のライブラリが利用できるようにする。これは検索するファイルに、アーキテクチャを示す文字列を後置したものを加えることによってなされる。
- -b input-format
-
コマンドラインでこのオプションに続いて指定された入力オブジェクトファイルのバイナリフォーマットを指定する。通常この指定は必要ない。
ld はそれぞれのマシンで最も一般的なフォーマットをデフォルトの入力フォーマットとするように設定されているからである。
input-format はテキスト文字列で、 BFD ライブラリによってサポートされている特定のフォーマットの名前である。
-format
input-format はスクリプトコマンド
TARGET と同じ効力を持つ。
- -Bstatic
-
共有ライブラリに対するリンクをしない。これは共有ライブラリをサポートしているプラットフォームにおいてのみ意味を持つ。
- -Bdynamic
-
動的ライブラリに対してリンクする。これは共有ライブラリをサポートしているプラットフォームにおいてのみ意味を持つ。そのようなプラットフォームではこのオプションは通常デフォルトになっている。
- -Bsymbolic
-
共有ライブラリを作る場合、グローバルシンボルへの参照を共有ライブラリ内部の定義 (definition) と結合する。共有ライブラリにリンクされるプログラムでは、通常この共有ライブラリ内部の定義を上書きすることができる。このオプションが意味を持つのは共有ライブラリをサポートする ELF プラットフォームのみである。
- -c commandfile
-
commandfile からリンクコマンドを読むように
ld に指示する。これらのコマンドは
ld デフォルトのリンクフォーマットを完全に上書きする (デフォルトに追加されるわけではない)。
commandfile ではターゲットフォーマットに関して必要な記述がすべてされていなければならない。
- --cref
-
クロスリファレンスのテーブルを出力する。リンカのマップファイルが生成される場合には、クロスリファレンステーブルはマップファイルに出力される。それ以外の場合には標準出力に表示される。
- -d
- -dc
- -dp
-
これらの 3 つのオプションは等価である。複数の形式があるのは他のリンカとの互換性のためである。これらのいずれかを指定すると、
ld はリロケータブル出力ファイルが指定 (
-r) された場合でも共通シンボルのための領域を割り当てる。スクリプトコマンド
FORCE_COMMON_ALLOCATION が同じ効力を持つ。
- -defsym symbol = expression
-
expression によって与えられた絶対アドレスを含むグローバルシンボルを出力ファイルに生成する。このオプションは必要なだけコマンドラインに指定でき、複数のシンボルを定義することができる。
expression の指定には簡単な算術もサポートされている。 16 進定数や存在する他のシンボルを与えたり、
+ や
- をそれらの間の足し引きに用いることもできる。より手の込んだ数式が必要な場合には、スクリプトでリンカコマンド言語を用いることをすすめる。
- -e entry
-
entry をプログラムのエントリポイントを示すシンボルとして取り扱う (デフォルトのエントリポイントを上書きする)。デフォルトと他のエントリポイントの指定方法については ld の info の *Note Entry Point:: を参照すること。
- -embedded-relocs
-
このオプションが意味を持つのは GNU コンパイラやアセンブラの
-membedded-pic オプションによって生成された MIPS embedded な PIC コードをリンクする場合だけである。これはリンカにテーブルを生成させる。このテーブルは、ポインタ値に対して static に初期化された全てのデータを実行時にリロケートする際に用いられる。詳細は testsuite/ld-empic 内部のコードを参照のこと。
- -E
- -export-dynamic
-
ELF ファイルを作成する際に、全てのシンボルをダイナミックなシンボルテーブルに追加する。通常ダイナミックシンボルテーブルには動的なオブジェクトによって用いられるシンボルのみが含まれている。このオプションは
dlopen を使う場合などに必要となる。
- -f name
- --auxiliary name
-
ELF 共有オブジェクトを作成する際に、内部の DT_AUXILIARY フィールドを指定した名前に設定する。この指定によって、ダイナミックリンカは扱っている共有オブジェクトのシンボルテーブルを、他の共有オブジェクト
name のシンボルテーブルの補助フィルタとして用いるようになる。
- -F name
- --filter name
-
ELF 共有オブジェクトを作成する際に、内部の DT_FILTER フィールドを指定した名前に設定する。この指定によって、ダイナミックリンカはその共有オブジェクトのシンボルテーブルを、他の共有オブジェクト
name のシンボルテーブルのフィルタとして用いるようになる。
- -format input-format
-
-b
input-format と同義。
- -g
-
受け付けるが無視される。他のツールとの互換性のために用意されている。
- -G size
-
MIPS ECOFF において、 GP レジスタを用いて最適化するオブジェクトの最大サイズを
size に設定する。他のオブジェクトファイルフォーマットでは無視される。
- -h name
- -soname name
-
ELF 共有オブジェクトを作成するとき、内部の DT_SONAME フィールドを指定した名前に設定する。実行ファイルが DT_SONAME フィールドを持つ共有オブジェクトとリンクされると、これの実行時にダイナミックリンカは DT_SONAME によって指定された共有オブジェクトをロードしようとする (通常はリンカに対して指定されたファイルをロードする)。
- --help
-
コマンドラインオプションの要約を標準出力に表示して終了する。このオプションと
--version は、他の GNU プログラムとの互換性のためダッシュ (-) 二つで始まる。これ以外のオプションは他のリンカとの互換性のためダッシュ一つで始まる。
- -i
-
インクリメンタルリンクを実行する (オプション
-r と同じ)。
- -l ar
-
アーカイブファイル
ar をリンクするファイルのリストに加える。このオプションは何回でも指定できる。
ld は
ar が指定されるごとに、
lib
ar.a が見つかるまで検索パスを探す。
- -L searchdir
-
このコマンドは
searchdir を
ld の書庫ライブラリの検索パスに追加する。このオプションは必要なだけ指定できる。
- -M
-
標準出力にリンクマップを表示する。リンクマップには
ld によってマップされたシンボルの位置情報とグローバルな共通メモリ領域の割当て情報が含まれている。
- -Map mapfile
-
ファイル
mapfile にリンクマップを出力する。リンクマップには
ld によってマップされたシンボルの位置情報とグローバルな共通 storage の割当て情報が含まれている。
- -m emulation
-
リンカ
emulation をエミュレートする。エミュレートできるもののリストは
--verbose または
-V で得られる。このオプションはコンパイル時のデフォルト (
ld の設定を行ったシステム向けのリンカ) を上書きする。
- -N
-
text と
data セクションを読み書き可能にする。出力フォーマットが Unix スタイルのマジック・ナンバーをサポートしている場合は、出力ファイルに
OMAGIC がマークされる。
- -n
-
text セグメントをリードオンリーにする。可能な場合は
NMAGIC が書き込まれる。
- -noinhibit-exec
-
通常リンカはリンク処理の途中でエラーになると出力ファイルを生成しない。このフラグをもちいると致命的でないエラーの場合には出力ファイルを残すように指定できる。
- -no-keep-memory
-
通常リンカはメモリ消費量よりも実行速度を優先するように最適化されている。すなわち入力ファイルのシンボルテーブルがメモリにキャッシュされている。このオプションを指定すると、メモリ消費を抑えるようになる (必要に応じてシンボルテーブルを読み直す)。このオプションは大きな実行ファイルをリンクするとき、メモリを使い果たしてしまうような場合に指定する必要がある。
- -no-warn-mismatch
-
何らかの理由でマッチしない入力ファイルをいっしょにリンクしようとすると、リンカは通常エラーになります。この原因としては、それらの入力ファイルが異なるプロセッサ用に、あるいは異なるエンディアン用にコンパイルされたなどが考えられます。このオプションを指定すると、リンカはこの種の潜在的なエラーを黙って許可します。このオプションは不用意に使うべきではありません。リンカのエラーをどうしても避けたいような、特殊な作業を行っているときに限るべきです。
- -o output
-
output は
ld によって作成されるプログラムの名前である。このオプションが指定されなかった場合は
a.out がデフォルトとして用いられる。スクリプトコマンド
OUTPUT でも出力ファイル名を指定できる。
- -oformat output-format
-
出力されるオブジェクトファイルのバイナリフォーマットを指定する。通常はこのオプションは必要ない。
ld でのデフォルトの出力フォーマットは、それぞれのマシンで最も普通のフォーマットになるように設定されているからである。
output-format はテキスト文字列で、 BFD ライブラリでサポートされている特定のフォーマットの名前である。スクリプトコマンド
OUTPUT_FORMAT でも出力フォーマットを指定できる。しかしこのオプションはスクリプトでの指定を上書きする。
- -R filename
-
シンボル名とそれらのアドレスを
filename から読み込む。しかしそれらのリロケートや出力への追加は行わない。これによって出力ファイルでは、(他のプログラムで定義された) メモリ上の絶対アドレスをシンボルを用いて参照できることになる。
- -relax
-
機能はマシンに依存する。現在では H8/300 でのみサポートされている。
- -r
-
リロケータブルな出力を生成する。すなわち再び
ld の入力として用いることができるようなファイルを生成する。これはしばしば部分 (
partial) リンクと呼ばれる。また標準 Unix のマジック・ナンバーをサポートする環境では、このオプションは出力ファイルのマジック・ナンバーを
OMAGIC にする。このオプションが指定されなかった場合は、完全なファイルが生成される。 C++ プログラムをリンクする場合、このオプションはコンストラクタへの参照を解決
しない。 C++ の場合には代わりに
-Ur を用いることができる。
- -rpath directory
-
ディレクトリを実行時ライブラリの検索パスに追加する。これは ELF の実行ファイルを共有オブジェクトとリンクするときに用いられる。
-rpath の引き数は全て結合され、ダイナミックリンカに渡される。ダイナミックリンカは、これを用いてロードする共有オブジェクトを実行時に決定する。
-rpath オプションはリンクに明示的に含まれている共有オブジェクトによって必要とされる別の共有オブジェクトを指定するのに用いることもできる。
-rpath-link オプションの説明を見よ。 ELF 実行ファイルの
-rpath が指定されない場合には、 (指定されていれば) 環境変数
LD_RUN_PATH の値が用いられる。
- -rpath-link directory
-
ELF か SunOS を用いている場合、ある共有ライブラリが別の共有ライブラリを必要とする場合がある。これは
ld -shared によるリンクで入力ファイルに共有ライブラリが含まれている場合に起こる。
- -S
-
出力ファイルからデバッガのシンボル情報を削除する (全てのシンボルではない)。
- -s
-
出力ファイルから全てのシンボル情報を削除する。
- -shared
-
共有ライブラリを生成する。現在のところ ELF と SunOS プラットフォームでのみサポートされている (実際には SunOS では不要である。なぜならリンカは未定義シンボルが存在していたり
-e オプションが指定されている場合には自動的に共有ライブラリを生成するからである)。
- -sort-common
-
通常
ld がグローバルな共通シンボルをそれぞれの出力セクションに配置するにあたっては、それらはサイズによってソートされる。まず 1 バイト変数のシンボル、ついで 2 バイト、 4 バイト変数のシンボル、最後にそれ以外のものが並ぶ。このオプションはアラインメントによって生じてしまうシンボル間のギャップを防止する。このオプションはソートを行わないようにする。
- -split-by-reloc count
-
出力ファイルに余分なセクションを生成して、ファイル中のそれぞれの出力セクションが
count 以上のリロケーションを含まないようにする。これは COFF オブジェクトファイルフォーマットの巨大なリロケータブルファイルを、リアルタイムカーネルにダウンロードする場合などに役に立つ。 COFF はセクションあたり 65535 以上のリロケーションを持てないからである。任意のセクションをサポートしていないフォーマットでは、このオプションは機能しないことに注意。リンカはそれぞれの入力セクションを分割して再配置するわけではない。したがって入力ファイルのセクションに
count 以上のリロケーションを含むものがあれば、それに対応してそれだけのリロケーションを持った出力セクションは作成されてしまう。
- -split-by-file
-
-split-by-reloc と似ているが、それぞれの入力ファイルに対して新たな出力セクションを生成する。
- -Tbss org
- -Tdata org
- -Ttext org
-
それぞれ出力ファイルの
bss、
data、
text セグメントに対して
org を開始アドレスにする。
org は 16 進の整数でなければならない。
- -T commandfile
-
-c
commandfile と等価である。他のツールとの互換性のために用意された。
- -t
-
入力ファイルを
ld が処理するごとに、ファイルの名前を表示する。
- -u sym
-
sym を出力ファイルに未定義なシンボルとして挿入する。例えばこれは、標準ライブラリから付加的なモジュールをリンクするトリガに使うことができる。
-u は必要な未定義シンボルの数だけ繰り返すことができる。
- -Ur
-
C++ プログラム以外では、このオプションは
-r と等価であり、リロケータブルな出力を生成する (つまり再び
ld の入力ファイルに用いることのできるファイルを出力する)。 C++ プログラムをリンクする際には、
-Ur は
-r と異なり、コンストラクタへの参照を解決する。
- --verbose
-
ld のバージョン番号を表示し、サポートされているエミュレーションをリストする。入力ファイルがそれぞれオープンできるかどうかも表示する。
- -v, -V
-
ld のバージョン番号を表示する。
-V はサポートされているエミュレーションもリストする。
- --version
-
ld のバージョン番号を表示して終了する。
- -warn-common
-
共通シンボルが他の共通シンボルやシンボル定義と結合されている場合に警告を発する。 Unix のリンカはこの点には比較的寛容であるが、他の OS のリンカにはそうでないものもある。このオプションはグローバルシンボルを結合することによって生じる問題点を見つける手がかりになるかもしれない。
- -warn-constructors
-
グローバルコンストラクタが用いられたら警告を発する。これが意味を持つオブジェクトファイルフォーマットは少ない。 COFF や ELF では、リンカはグローバルコンストラクタを検出することができない。
- -warn-multiple-gp
-
出力ファイルに複数のグローバルなポインタ値が必要な場合に警告を発する。このオプションが意味を持つのは、 Alpha のような特殊なプロセッサだけである。
- -warn-once
-
未定義シンボルに関する警告をシンボルごとに一度だけにする。デフォルトではそのシンボルを参照するモジュール一つについて一回警告が出る。
- -warn-section-align
-
出力セクションのアドレスがアラインメントのために変更された場合に警告を出す。通常アラインメントは入力セクションによって設定される。アドレスは明示的に指定されなかった場合 (つまり SECTIONS コマンドがセクションのスタートアドレスを指定しなかった場合) にのみ変更されうる。
- --whole-archive
-
コマンドラインでこのオプション以降に指定されたそれぞれの書庫に対して、書庫内部の全てのオブジェクトファイルをリンクする (デフォルトでは書庫から必要なオブジェクトファイルを検索する)。これは通常書庫ファイルを共有ライブラリに変えるとき、内部のオブジェクトを全て共有ライブラリに含めるために指定される。
- --no-whole-archive
-
コマンドラインでこのオプション以降に現われる書庫に対して
--whole-archive オプションの効果を無効にする。
- --wrap symbol
-
symbol に対してラッパ機能を用いる。
symbol への未定義な参照は全て
__wrap_
symbol として解決される。また
__REAL_
symbol への未定義な参照はすべて
symbol として解決される。
- -X
-
一時的なローカルシンボルをすべて削除する。ほとんどのターゲットでは、これは `
L' で始まるローカルシンボルを意味する。
- -x
- ローカルシンボルを全て削除する。
環境変数
ld の動作は環境変数 GNUTARGET によって変更することができる。
関連項目
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17 August 1992 | cygnus support |