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ld(1)
ld(1) GNU Development Tools ld(1)

名前

ld - GNU リンカ
 

書式

ld
[ -o

output] objfile...

 

[ -Aarchitecture] [ -b input-format] [ -Bstatic] [ -Bdynamic] [ -Bsymbolic] [ -c commandfile] [ --cref] [ -d| -dc| -dp]

 

[ -defsym symbol = expression] [ -e entry] [ -embedded-relocs] [ -E] [ -export-dynamic] [ -f name] [ --auxiliary name] [ -F name] [ --filter name] [ -format input-format] [ -g] [ -G size] [ -h name] [ -soname name] [ --help] [ -i] [ -lar] [ -Lsearchdir] [ -M] [ -Map mapfile] [ -m emulation] [ -n| -N] [ -noinhibit-exec] [ -no-keep-memory] [ -no-warn-mismatch] [ -oformat output-format] [ -R filename] [ -relax] [ -r| -Ur] [ -rpath directory] [ -rpath-link directory] [ -S] [ -s] [ -shared] [ -sort-common] [ -split-by-reloc count] [ -split-by-file] [ -T commandfile] [ -Ttext textorg] [ -Tdata dataorg] [ -Tbss bssorg] [ -t] [ -u sym] [ -V] [ -v] [ --verbose] [ --version] [ -warn-common] [ -warn-constructors] [ -warn-multiple-gp] [ -warn-once] [ -warn-section-align] [ --whole-archive] [ --no-whole-archive] [ --wrap symbol] [ -X] [ -x]

説明

ld は複数のオブジェクトファイルや書庫 (archive) ファイルを結合し、それらのデータをリロケートして、シンボルの参照をまとめる。新たな実行プログラムをコンパイルして作成する作業の最終ステップは、多くの場合 ld の呼び出しとなる。
 
ld はリンカコマンド言語のファイルを受け付ける。このファイルでリンク処理を明示的に、また完全に制御することができる。この man ページではコマンド言語を説明していない。コマンド言語や GNU リンカのその他の内容に関する詳細は info の ` ld' エントリか、マニュアルである ld: the GNU linker を参照すること。
 
ld の本バージョンではオブジェクトファイル関連の作業に汎用の BFD ライブラリを用いている。これによって ld では多くの異なるフォーマットのオブジェクトファイルを読み、書き、結合することができるようになっている ( 例えば COFF や a.out)。異なるフォーマットをリンクして、あらゆる種類のオブジェクトファイルを作成できる。サポートされているフォーマットや関連するアーキテクチャに関しては ` objdump -i' を実行すればよい。詳細は objdump( 1) を見よ。
 
GNU リンカは柔軟であるだけでなく、診断 (diagnostic) メッセージも他のリンカより詳しい。多くのリンカはエラーが生じるとすぐに動作を停止してしまうが、 ld は可能な限り処理を続け、他のエラーに関しても知らせようとする (あるいはエラーにもかかわらず出力ファイルを作成してしまうことさえある)。
 
GNU リンカ ld は多くの状況をカバーするように作成されている。また他のリンカとできる限り互換性を保つようにしてある。したがって ld の振る舞いは、コマンドラインや環境変数によって細かく制御できるようになっている。
 

オプション

コマンドラインオプションのあまりの多さに怖気づくかもしれないが、実際の作業で指定されるオプションは、ほとんどの場合少ない。例として ld の良く用いられる例、サポートされている標準的な Unix システムで標準 Unix のオブジェクトファイルを作成する場合を考えよう。このようなシステムで hello.o ファイルをリンクする作業は以下のようになる。
 
 
$ ld -o output /lib/crt0.o hello.o -lc
 
 
この例では ldoutput という名前のファイルを作成するように命令している。リンクするファイルは /lib/crt0.ohello.o および標準的な検索ディレクトリにあるライブラリ libc.a である。
 
ld のコマンドラインオプションは任意の順序で指定でき、必要なだけ繰り返すことができる。オプションの繰り返しは、多くの場合最初のもの以外を無視するか、先の指定 (コマンドラインの左にあるもの) を上書きするかになる。
 
例外 (複数回の指定が意味を持つもの) は以下の通り。 -A-b (またはその同義である -format)、 -defsym-L-l-R-u
 
リンクする (複数の) オブジェクトファイルは objfile として与えるが、これはコマンドラインでオプションの後、前、あるいは混ぜて置いても構わない。ただし objfie をオプションのフラグとその引数の間に置くことはできない。
 
通常リンカの実行には最低一つのオブジェクトファイルが指定されるが、異なるフォーマットを持つバイナリファイルを -l-R やスクリプトコマンド言語で指定することもできる。バイナリの入力ファイルが 一つも指定されない場合には、リンカは出力ファイルを作成せず、 ` No input files' というメッセージを表示する。
 
オプションの引数はオプション文字の直後にスペースなしで続けることもできるし、オプションの次に別の引数として置くこともできる。
 
-A architecture
ld のこのリリースでは、このオプションは Intel 960 アーキテクチャのファミリに対してのみ意味を持つ。このファミリ向けに設定された ld では、 architecture 引数は 960 ファミリのメンバーを示す 2 文字の名前のどれかを指定する。このオプションは出力ターゲットを指定し、入力ファイルにある非互換な命令全てに対して警告メッセージを表示する。またリンカが書庫ライブラリを検索する方法を変更し、指定されたアーキテクチャに特有のライブラリが利用できるようにする。これは検索するファイルに、アーキテクチャを示す文字列を後置したものを加えることによってなされる。
 
例えば使用している ld のコマンドラインに -ACA または -ltry があれば、リンカは組み込みの検索パスと -L で指定されたパスを探し、以下のような名前のライブラリを見つけようとする。
 
 
try
 
libtry.a
 
tryca
 
libtryca.a
 
 
 
最初の二つはどんな場合でも検索されるものであり、後の二つは -ACA を用いたことによって加わったものである。
 
ld の将来のリリースでは、同じような機能が他のアーキテクチャファミリでもサポートされる可能性がある。
 
-A オプションはコマンドラインで複数回用いられると、それぞれが意味を持つ。ただしアーキテクチャファミリがターゲットの組み合わせを許す場合に限られる。それぞれの指定によって、 -l で指定されたライブラリに名前のバリエーションを付けたものが検索される。
 
-b input-format
コマンドラインでこのオプションに続いて指定された入力オブジェクトファイルのバイナリフォーマットを指定する。通常この指定は必要ない。 ld はそれぞれのマシンで最も一般的なフォーマットをデフォルトの入力フォーマットとするように設定されているからである。 input-format はテキスト文字列で、 BFD ライブラリによってサポートされている特定のフォーマットの名前である。 -format input-format はスクリプトコマンド TARGET と同じ効力を持つ。
 
一般的なバイナリフォーマットではないファイルをリンクする場合に、このオプションを指定することになる。また異なるフォーマットのオブジェクトファイルをリンクする際に、フォーマットを明示的に変更する目的に -b を使うこともできる。この際には -b input-foramt をそれぞれのフォーマットに属するオブジェクトファイル群の前に挿入する。
 
デフォルトのフォーマットは環境変数 GNUTARGET から取得される。スクリプトでコマンド TARGET を用いて入力フォーマットを設定することもできる。
 
-Bstatic
共有ライブラリに対するリンクをしない。これは共有ライブラリをサポートしているプラットフォームにおいてのみ意味を持つ。
 
-Bdynamic
動的ライブラリに対してリンクする。これは共有ライブラリをサポートしているプラットフォームにおいてのみ意味を持つ。そのようなプラットフォームではこのオプションは通常デフォルトになっている。
 
-Bsymbolic
共有ライブラリを作る場合、グローバルシンボルへの参照を共有ライブラリ内部の定義 (definition) と結合する。共有ライブラリにリンクされるプログラムでは、通常この共有ライブラリ内部の定義を上書きすることができる。このオプションが意味を持つのは共有ライブラリをサポートする ELF プラットフォームのみである。
 
-c commandfile
commandfile からリンクコマンドを読むように ld に指示する。これらのコマンドは ld デフォルトのリンクフォーマットを完全に上書きする (デフォルトに追加されるわけではない)。 commandfile ではターゲットフォーマットに関して必要な記述がすべてされていなければならない。
 
リンクコマンドのスクリプトは、コマンドラインでも指定できる。これにはスクリプトの文字列をブラケット (` {' と ` }') で囲う。
 
--cref
クロスリファレンスのテーブルを出力する。リンカのマップファイルが生成される場合には、クロスリファレンステーブルはマップファイルに出力される。それ以外の場合には標準出力に表示される。
 
-d
-dc
-dp
これらの 3 つのオプションは等価である。複数の形式があるのは他のリンカとの互換性のためである。これらのいずれかを指定すると、 ld はリロケータブル出力ファイルが指定 ( -r) された場合でも共通シンボルのための領域を割り当てる。スクリプトコマンド FORCE_COMMON_ALLOCATION が同じ効力を持つ。
 
-defsym symbol = expression
expression によって与えられた絶対アドレスを含むグローバルシンボルを出力ファイルに生成する。このオプションは必要なだけコマンドラインに指定でき、複数のシンボルを定義することができる。 expression の指定には簡単な算術もサポートされている。 16 進定数や存在する他のシンボルを与えたり、 +- をそれらの間の足し引きに用いることもできる。より手の込んだ数式が必要な場合には、スクリプトでリンカコマンド言語を用いることをすすめる。
 
-e entry
entry をプログラムのエントリポイントを示すシンボルとして取り扱う (デフォルトのエントリポイントを上書きする)。デフォルトと他のエントリポイントの指定方法については ld の info の *Note Entry Point:: を参照すること。
 
-embedded-relocs
このオプションが意味を持つのは GNU コンパイラやアセンブラの -membedded-pic オプションによって生成された MIPS embedded な PIC コードをリンクする場合だけである。これはリンカにテーブルを生成させる。このテーブルは、ポインタ値に対して static に初期化された全てのデータを実行時にリロケートする際に用いられる。詳細は testsuite/ld-empic 内部のコードを参照のこと。
 
-E
-export-dynamic
ELF ファイルを作成する際に、全てのシンボルをダイナミックなシンボルテーブルに追加する。通常ダイナミックシンボルテーブルには動的なオブジェクトによって用いられるシンボルのみが含まれている。このオプションは dlopen を使う場合などに必要となる。
 
-f name
--auxiliary name
ELF 共有オブジェクトを作成する際に、内部の DT_AUXILIARY フィールドを指定した名前に設定する。この指定によって、ダイナミックリンカは扱っている共有オブジェクトのシンボルテーブルを、他の共有オブジェクト name のシンボルテーブルの補助フィルタとして用いるようになる。
 
-F name
--filter name
ELF 共有オブジェクトを作成する際に、内部の DT_FILTER フィールドを指定した名前に設定する。この指定によって、ダイナミックリンカはその共有オブジェクトのシンボルテーブルを、他の共有オブジェクト name のシンボルテーブルのフィルタとして用いるようになる。
 
-format input-format
-b input-format と同義。
 
-g
受け付けるが無視される。他のツールとの互換性のために用意されている。
 
-G size
MIPS ECOFF において、 GP レジスタを用いて最適化するオブジェクトの最大サイズを size に設定する。他のオブジェクトファイルフォーマットでは無視される。
 
-h name
-soname name
ELF 共有オブジェクトを作成するとき、内部の DT_SONAME フィールドを指定した名前に設定する。実行ファイルが DT_SONAME フィールドを持つ共有オブジェクトとリンクされると、これの実行時にダイナミックリンカは DT_SONAME によって指定された共有オブジェクトをロードしようとする (通常はリンカに対して指定されたファイルをロードする)。
 
--help
コマンドラインオプションの要約を標準出力に表示して終了する。このオプションと --version は、他の GNU プログラムとの互換性のためダッシュ (-) 二つで始まる。これ以外のオプションは他のリンカとの互換性のためダッシュ一つで始まる。
 
-i
インクリメンタルリンクを実行する (オプション -r と同じ)。
 
-l ar
アーカイブファイル ar をリンクするファイルのリストに加える。このオプションは何回でも指定できる。 ldar が指定されるごとに、 lib ar.a が見つかるまで検索パスを探す。
 
-L searchdir
このコマンドは searchdirld の書庫ライブラリの検索パスに追加する。このオプションは必要なだけ指定できる。
 
デフォルトの検索パス ( -L が指定されなかったときの検索パス) は ld が用いているエミュレーションのモードに依存する。また設定に依存する場合もある。リンクスクリプトでは SEARCH_DIR コマンドを用いてこのパスを設定することもできる。
 
-M
標準出力にリンクマップを表示する。リンクマップには ld によってマップされたシンボルの位置情報とグローバルな共通メモリ領域の割当て情報が含まれている。
 
-Map mapfile
ファイル mapfile にリンクマップを出力する。リンクマップには ld によってマップされたシンボルの位置情報とグローバルな共通 storage の割当て情報が含まれている。
 
-m emulation
リンカ emulation をエミュレートする。エミュレートできるもののリストは --verbose または -V で得られる。このオプションはコンパイル時のデフォルト ( ld の設定を行ったシステム向けのリンカ) を上書きする。
 
-N
textdata セクションを読み書き可能にする。出力フォーマットが Unix スタイルのマジック・ナンバーをサポートしている場合は、出力ファイルに OMAGIC がマークされる。
 
-N オプションを指定するとリンカは data セグメントのページ位置調整を行わない。
 
-n
text セグメントをリードオンリーにする。可能な場合は NMAGIC が書き込まれる。
 
-noinhibit-exec
通常リンカはリンク処理の途中でエラーになると出力ファイルを生成しない。このフラグをもちいると致命的でないエラーの場合には出力ファイルを残すように指定できる。
 
-no-keep-memory
通常リンカはメモリ消費量よりも実行速度を優先するように最適化されている。すなわち入力ファイルのシンボルテーブルがメモリにキャッシュされている。このオプションを指定すると、メモリ消費を抑えるようになる (必要に応じてシンボルテーブルを読み直す)。このオプションは大きな実行ファイルをリンクするとき、メモリを使い果たしてしまうような場合に指定する必要がある。
 
-no-warn-mismatch
何らかの理由でマッチしない入力ファイルをいっしょにリンクしようとすると、リンカは通常エラーになります。この原因としては、それらの入力ファイルが異なるプロセッサ用に、あるいは異なるエンディアン用にコンパイルされたなどが考えられます。このオプションを指定すると、リンカはこの種の潜在的なエラーを黙って許可します。このオプションは不用意に使うべきではありません。リンカのエラーをどうしても避けたいような、特殊な作業を行っているときに限るべきです。
 
-o output
outputld によって作成されるプログラムの名前である。このオプションが指定されなかった場合は a.out がデフォルトとして用いられる。スクリプトコマンド OUTPUT でも出力ファイル名を指定できる。
 
-oformat output-format
出力されるオブジェクトファイルのバイナリフォーマットを指定する。通常はこのオプションは必要ない。 ld でのデフォルトの出力フォーマットは、それぞれのマシンで最も普通のフォーマットになるように設定されているからである。 output-format はテキスト文字列で、 BFD ライブラリでサポートされている特定のフォーマットの名前である。スクリプトコマンド OUTPUT_FORMAT でも出力フォーマットを指定できる。しかしこのオプションはスクリプトでの指定を上書きする。
 
-R filename
シンボル名とそれらのアドレスを filename から読み込む。しかしそれらのリロケートや出力への追加は行わない。これによって出力ファイルでは、(他のプログラムで定義された) メモリ上の絶対アドレスをシンボルを用いて参照できることになる。
 
-relax
機能はマシンに依存する。現在では H8/300 でのみサポートされている。
 
プラットフォームによっては、このオプションを指定するとグローバルな最適化を行う場合もある。これはリンカがプログラムのアドレスを置き換える (出力されるオブジェクトファイルのアドレスモードを relax させたり新しい命令を同期させる) 場合に可能となる。
 
サポートされていないプラットフォームでは、 -relax は受け付けられるが何も起こらない。
 
-r
リロケータブルな出力を生成する。すなわち再び ld の入力として用いることができるようなファイルを生成する。これはしばしば部分 ( partial) リンクと呼ばれる。また標準 Unix のマジック・ナンバーをサポートする環境では、このオプションは出力ファイルのマジック・ナンバーを OMAGIC にする。このオプションが指定されなかった場合は、完全なファイルが生成される。 C++ プログラムをリンクする場合、このオプションはコンストラクタへの参照を解決 しない。 C++ の場合には代わりに -Ur を用いることができる。
 
このオプションは -i と同じ。
 
-rpath  directory
ディレクトリを実行時ライブラリの検索パスに追加する。これは ELF の実行ファイルを共有オブジェクトとリンクするときに用いられる。 -rpath の引き数は全て結合され、ダイナミックリンカに渡される。ダイナミックリンカは、これを用いてロードする共有オブジェクトを実行時に決定する。 -rpath オプションはリンクに明示的に含まれている共有オブジェクトによって必要とされる別の共有オブジェクトを指定するのに用いることもできる。 -rpath-link オプションの説明を見よ。 ELF 実行ファイルの -rpath が指定されない場合には、 (指定されていれば) 環境変数 LD_RUN_PATH の値が用いられる。
 
-rpath オプションは SunOS で用いることもできる。 SunOS のデフォルトでは、リンカは実行時の検索パスを -L オプションで与えられたパスから生成する。 -rpath が用いられると、実行時の検索パスは -rpath オプションで与えられたパスのみから生成され、 -L オプションは無視される。これは gcc を使っていて、 -L がたくさん指定されてしまう (これらは NFS マウントされたファイルシステムかもしれない) 場合などに便利である。
 
-rpath-link  directory
ELF か SunOS を用いている場合、ある共有ライブラリが別の共有ライブラリを必要とする場合がある。これは ld -shared によるリンクで入力ファイルに共有ライブラリが含まれている場合に起こる。
 
リンカが非共有 (非リロケータブル) なリンクを行っているときに、このような依存関係に遭遇すると、リンカは自動的にその必要とされている共有ライブラリも (明示されていなくても) リンクしてしまおうとする。このような場合に -rpath-link オプションは検索する最初のディレクトリセットを指定する。 -rpath-link オプションではディレクトリ名の並びをコロンで区切って一度に指定することもできるし、複数回用いて指定することもできる。
 
必要な共有ライブラリが見つからないと、リンカは警告を出してリンク処理を継続しようとする。
 
-S
出力ファイルからデバッガのシンボル情報を削除する (全てのシンボルではない)。
 
-s
出力ファイルから全てのシンボル情報を削除する。
 
-shared
共有ライブラリを生成する。現在のところ ELF と SunOS プラットフォームでのみサポートされている (実際には SunOS では不要である。なぜならリンカは未定義シンボルが存在していたり -e オプションが指定されている場合には自動的に共有ライブラリを生成するからである)。
 
-sort-common
通常 ld がグローバルな共通シンボルをそれぞれの出力セクションに配置するにあたっては、それらはサイズによってソートされる。まず 1 バイト変数のシンボル、ついで 2 バイト、 4 バイト変数のシンボル、最後にそれ以外のものが並ぶ。このオプションはアラインメントによって生じてしまうシンボル間のギャップを防止する。このオプションはソートを行わないようにする。
 
-split-by-reloc  count
出力ファイルに余分なセクションを生成して、ファイル中のそれぞれの出力セクションが count 以上のリロケーションを含まないようにする。これは COFF オブジェクトファイルフォーマットの巨大なリロケータブルファイルを、リアルタイムカーネルにダウンロードする場合などに役に立つ。 COFF はセクションあたり 65535 以上のリロケーションを持てないからである。任意のセクションをサポートしていないフォーマットでは、このオプションは機能しないことに注意。リンカはそれぞれの入力セクションを分割して再配置するわけではない。したがって入力ファイルのセクションに count 以上のリロケーションを含むものがあれば、それに対応してそれだけのリロケーションを持った出力セクションは作成されてしまう。
 
-split-by-file
-split-by-reloc と似ているが、それぞれの入力ファイルに対して新たな出力セクションを生成する。
 
-Tbss org
-Tdata org
-Ttext org
それぞれ出力ファイルの bssdatatext セグメントに対して org を開始アドレスにする。 org は 16 進の整数でなければならない。
 
-T commandfile
-c commandfile と等価である。他のツールとの互換性のために用意された。
 
-t
入力ファイルを ld が処理するごとに、ファイルの名前を表示する。
 
-u sym
sym を出力ファイルに未定義なシンボルとして挿入する。例えばこれは、標準ライブラリから付加的なモジュールをリンクするトリガに使うことができる。 -u は必要な未定義シンボルの数だけ繰り返すことができる。
 
-Ur
C++ プログラム以外では、このオプションは -r と等価であり、リロケータブルな出力を生成する (つまり再び ld の入力ファイルに用いることのできるファイルを出力する)。 C++ プログラムをリンクする際には、 -Ur-r と異なり、コンストラクタへの参照を解決する。
 
--verbose
ld のバージョン番号を表示し、サポートされているエミュレーションをリストする。入力ファイルがそれぞれオープンできるかどうかも表示する。
 
-v, -V
ld のバージョン番号を表示する。 -V はサポートされているエミュレーションもリストする。
 
--version
ld のバージョン番号を表示して終了する。
 
-warn-common
共通シンボルが他の共通シンボルやシンボル定義と結合されている場合に警告を発する。 Unix のリンカはこの点には比較的寛容であるが、他の OS のリンカにはそうでないものもある。このオプションはグローバルシンボルを結合することによって生じる問題点を見つける手がかりになるかもしれない。
 
-warn-constructors
グローバルコンストラクタが用いられたら警告を発する。これが意味を持つオブジェクトファイルフォーマットは少ない。 COFF や ELF では、リンカはグローバルコンストラクタを検出することができない。
 
-warn-multiple-gp
出力ファイルに複数のグローバルなポインタ値が必要な場合に警告を発する。このオプションが意味を持つのは、 Alpha のような特殊なプロセッサだけである。
 
-warn-once
未定義シンボルに関する警告をシンボルごとに一度だけにする。デフォルトではそのシンボルを参照するモジュール一つについて一回警告が出る。
 
-warn-section-align
出力セクションのアドレスがアラインメントのために変更された場合に警告を出す。通常アラインメントは入力セクションによって設定される。アドレスは明示的に指定されなかった場合 (つまり SECTIONS コマンドがセクションのスタートアドレスを指定しなかった場合) にのみ変更されうる。
 
--whole-archive
コマンドラインでこのオプション以降に指定されたそれぞれの書庫に対して、書庫内部の全てのオブジェクトファイルをリンクする (デフォルトでは書庫から必要なオブジェクトファイルを検索する)。これは通常書庫ファイルを共有ライブラリに変えるとき、内部のオブジェクトを全て共有ライブラリに含めるために指定される。
 
--no-whole-archive
コマンドラインでこのオプション以降に現われる書庫に対して --whole-archive オプションの効果を無効にする。
 
--wrap symbol
symbol に対してラッパ機能を用いる。 symbol への未定義な参照は全て __wrap_ symbol として解決される。また __REAL_ symbol への未定義な参照はすべて symbol として解決される。
 
-X
一時的なローカルシンボルをすべて削除する。ほとんどのターゲットでは、これは ` L' で始まるローカルシンボルを意味する。
 
-x
ローカルシンボルを全て削除する。

 

環境変数

ld の動作は環境変数 GNUTARGET によって変更することができる。
 
GNUTARGET-b (または等価なオプション -format) を用いない場合の入力ファイルのオブジェクトフォーマットを定義する。この値は入力フォーマットに対して有効な BFD 名の一つでなければならない。 GNUTARGETdefault に設定されていた場合には、 BFD は入力されるバイナリファイルを調べて入力フォーマットを決定しようとする。これは通常は成功するが、決定できない可能性もある。オブジェクトファイルフォーマットで用いられているマジック・ナンバーが一意であることを保証する方法は存在しないからである。しかし BFD をそれぞれのシステムで設定する際には、そのシステムに一般的なフォーマットが検索リストの最初の方に置かれる。したがって複数フォーマットの可能性が存在した場合には、より一般的なフォーマットとして解釈される。

 

関連項目

objdump( 1)
 
 
info の ` ld' および ` binutils' エントリ
 
ld: the GNU linker , Steve Chamberlain and Roland Pesch; The GNU Binary Utilities , Roland H. Pesch
 

著作権

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17 August 1992 cygnus support