はんしちとりものちょう 17 みかわまんざい
半七捕物帳 17 三河万歳

冒頭文

一 ある年の正月、門松(かどまつ)のまだ取れないうちに赤坂の家(うち)をたずねると、半七老人は格子の前に突っ立って、初春の巷(ちまた)のゆきかいを眺めているらしかった。 「やあ、いらっしゃい。まずおめでとうございます」 いつもの座敷へ通されて、年頭の挨拶が式(かた)のごとくに済むと、おなじみの老婢(ばあや)が屠蘇の膳を運び出して来た。わたしがここの家で屠蘇を祝うのは、このときが二

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 時代推理小説 半七捕物帳(二)
  • 光文社時代小説文庫、光文社
  • 1986(昭和61)年3月20日