はんしちとりものちょう 42 めん
半七捕物帳 42 仮面

冒頭文

ある冬の日、わたしが老人を赤坂の家にたずねると、老人は日あたりのいい庭にむかって新聞をよんでいた。その新聞には書画を種の大詐欺の記事がかかげてあって、京浜は勿論、関西九州方面にわたってその被害高は数万円にのぼったと書いてあった。老人は嘆息しながら云った。 「だんだん世の中が進むにつれて、万事が大仕掛けになりますね。それを思うとまったく昔の悪党は小さなもので、今とは較べものになりません。なにし

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 時代推理小説 半七捕物帳(四)
  • 光文社時代小説文庫、光文社
  • 1986(昭和61)年8月20日