はんしちとりものちょう 47 きんのろうそく
半七捕物帳 47 金の蝋燭

冒頭文

一 秋の夜の長い頃であった。わたしが例のごとく半七老人をたずねて、面白い昔話を聴かされていると、六畳の座敷の電灯がふっと消えた。 「あ、停電か」 老人は老婢(ばあや)を呼んで、すぐに蝋燭を持って来させた。 「行灯(あんどう)やランプと違って、電灯は便利に相違ないが、時々に停電するのが難儀ですね」 「それでもお宅には、いつでも蝋燭の用意があるのには感心しますね」と、わたしは

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 時代推理小説 半七捕物帳(四)
  • 光文社時代小説文庫、光文社
  • 1986(昭和61)年8月20日