はんしちとりものちょう 58 きくにんぎょうのむかし
半七捕物帳 58 菊人形の昔

冒頭文

一 「幽霊の観世物」の話が終ると、半七老人は更にこんな話を始めた。 「観世物ではまだこんなお話があります。こんにちでも繁昌している団子坂の菊人形、あれは江戸でも旧(ふる)いものじゃあありません。いったい江戸の菊細工は——などと、あなた方の前で物識りぶるわけではありませんが、文化九年の秋、巣鴨の染井の植木屋で菊人形を作り出したのが始まりで、それが大当りを取ったので、それを真似(まね)て方々で菊細

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 時代推理小説 半七捕物帳(五)
  • 光文社時代小説文庫、光文社
  • 1986(昭和61)年10月20日