はんしちとりものちょう 63 かわごえのじろべえ
半七捕物帳 63 川越次郎兵衛

冒頭文

一 四月の日曜と祭日、二日つづきの休暇を利用して、わたしは友達と二人連れで川越の喜多院の桜を見物して来た。それから一週間ほどの後に半七老人を訪問すると、老人は昔なつかしそうに云った。 「はあ、川越へお出ででしたか。わたくしも江戸時代に二度行ったことがあります。今はどんなに変りましたかね。御承知でもありましょうが、川越という土地は松平大和守(やまとのかみ)十七万石の城下で、昔からなかなか

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 時代推理小説 半七捕物帳(六)
  • 光文社時代小説文庫、光文社
  • 1986(昭和61)年12月20日