はんしちとりものちょう 03 かんぺいのし |
半七捕物帳 03 勘平の死 |
冒頭文
一 歴史小説の老大家T先生を赤坂のお宅に訪問して、江戸のむかしのお話をいろいろ伺ったので、わたしは又かの半七老人にも逢いたくなった。T先生のお宅を出たのは午後三時頃で、赤坂の大通りでは仕事師が家々のまえに門松(かどまつ)を立てていた。砂糖屋の店さきには七、八人の男や女が、狭そうに押し合っていた。年末大売出しの紙ビラや立看板や、紅い提灯やむらさきの旗や、濁(にご)った楽隊の音や、甲(かん)
文字遣い
新字新仮名
初出
底本
- 時代推理小説 半七捕物帳(一)
- 光文社時代小説文庫、光文社
- 1985(昭和60)年11月20日