はんしちとりものちょう 55 かむろへび
半七捕物帳 55 かむろ蛇

冒頭文

一 ある年の夏、わたしが房州の旅から帰って、形(かた)ばかりの土産物(みやげもの)をたずさえて半七老人を訪問すると、若いときから避暑旅行などをしたことの無いという老人は、喜んで海水浴場の話などを聴いた。 そのうちに、わたしが鋸山(のこぎりやま)へ登って、おびただしい蛇に出逢った話をすると、半七は顔をしかめながら笑った。 「わたしの識っている人で、鋸山の羅漢(らかん)さまへお参

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 時代推理小説 半七捕物帳(五)
  • 光文社時代小説文庫、光文社
  • 1986(昭和61)年10月20日