はんしちとりものちょう 22 ふでやのむすめ |
半七捕物帳 22 筆屋の娘 |
冒頭文
一 久し振りで半七老人に逢うと、それがまた病みつきになって、わたしはむやみに老人の話が聴きたくなった。「蝶合戦」の話を聞いたのち四、五日を経て、わたしはこの間の礼ながらに赤坂へたずねてゆくと、老人は縁側に出て金魚鉢の水を替えていた。けさも少し陰って、狭い庭の青葉は雨を待つように、頭をうなだれて、うす暗いかげを作っていた。 「あなたはつけが悪い。きょうも降られそうですぜ」と、半七老人は笑
文字遣い
新字新仮名
初出
底本
- 時代推理小説 半七捕物帳(二)
- 光文社時代小説文庫、光文社
- 1986(昭和61)年3月20日