はんしちとりものちょう 10 ひろしげとかわうそ
半七捕物帳 10 広重と河獺

冒頭文

一 むかしの正本(しょうほん)風に書くと、本舞台一面の平ぶたい、正面に朱塗りの仁王門、門のなかに観音境内の遠見(とおみ)、よきところに銀杏の立木、すべて浅草公園仲見世の体(てい)よろしく、六区の観世物の鳴物にて幕あく。——と、上手(かみて)より一人の老人、惣菜(そうざい)の岡田からでも出て来たらしい様子、下手(しもて)よりも一人の青年出で来たり、門のまえにて双方生き逢い、たがいに挨拶する

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 時代推理小説 半七捕物帳(一)
  • 光文社時代小説文庫、光文社
  • 1985(昭和60)年11月20日