はんしちとりものちょう 09 はるのゆきどけ |
半七捕物帳 09 春の雪解 |
冒頭文
一 「あなたはお芝居が好きだから、河内山(こうちやま)の狂言を御存知でしょう。三千歳(みちとせ)の花魁(おいらん)が入谷の寮へ出養生をしていると、そこへ直侍(なおざむらい)が忍んで来る。あの清元の外題(げだい)はなんと云いましたっけね。そう、忍逢春雪解(しのびあうはるのゆきどけ)。わたくしはあの狂言を看(み)るたんびに、いつも思い出すことがあるんですよ」と、半七老人はつづけて話した。「勿論お
文字遣い
新字新仮名
初出
底本
- 「時代推理小説 半七捕物帳(一)」
- 光文社時代小説文庫、光文社
- 1985(昭和60)年11月20日