はんしちとりものちょう 06 はんしょうのかい
半七捕物帳 06 半鐘の怪

冒頭文

一 半七老人を久し振りでたずねたのは、十一月はじめの時雨(しぐ)れかかった日であった。老人は四谷の初酉(はつとり)へ行ったと云って、かんざしほどの小さい熊手(くまで)を持って丁度いま帰って来たところであった。 「ひと足ちがいで失礼するところでした。さあ、どうぞ」 老人はその熊手を神棚にうやうやしく飾って、それからいつもの六畳の座敷へわたしを通した。酉の市(まち)の今昔談が一と

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 時代推理小説 半七捕物帳(一)
  • 光文社時代小説文庫、光文社
  • 1985(昭和60)年11月20日