はんしちとりものちょう 69 はくちょうかい |
半七捕物帳 69 白蝶怪 |
冒頭文
一 文化九年——申(さる)年の正月十八日の夜である。その夜も四ツ半(午後十一時)を過ぎた頃に、ふたりの娘が江戸小石川の目白不動堂を右に見て、目白坂から関口駒井町(ちょう)の方角へ足早にさしかかった。 駒井町をゆき抜ければ、音羽(おとわ)の大通りへ出る。その七丁目と八丁目の裏手には江戸城の御賄(おまかない)組の組屋敷がある。かれらは身分こそ低いが、みな相当に内福であったらしい。今ここ
文字遣い
新字新仮名
初出
底本
- 時代推理小説 半七捕物帳(六)
- 光文社時代小説文庫、光文社
- 1986(昭和61)年12月20日