げんだいし
現代詩

冒頭文

とにかく自分はひどく疲れてゐる。朝から数度にわたつて解熱剤を服(の)んで見るが、熱は少しも下らない。もつとも、この熱さましの頓服と云ふのは、銭惜しみする妻が近くの薬局で調合させた得態(えたい)の知れぬ安物なので、効き目なぞ怪しいのだらう。よけい頭ががんがんと痛むし、咽喉(のど)がつまつたやうでいくら咳(せ)いても痰が容易に切れない。不愉快である。さきほど、やつとうとうとして眠りかけると母親が部屋に

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 現代文学大系 44 武田麟太郎・島木健作・織田作之助集
  • 筑摩書房
  • 1967(昭和42)年