ぜつぼう
絶望

冒頭文

『オイ〳〵何處(どこ)へ行くんだよ。』 とお大(だい)と云ふ裏町のお師匠さんが、柳町(やなぎちやう)の或寄席(よせ)の前の汚(きたな)い床屋から往來へ聲をかける。 聲をかけられたのは、三人連(にんづれ)の女である。孰(いづれ)も縞(しま)か無地(むぢ)かの吾妻(アヅマコート)に、紺か澁蛇(しぶじや)の目(め)かの傘を翳(さ)して、飾(めか)し込んでゐるが、聲には氣もつかず、何やら笑

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 明治文學全集68 徳田秋聲集
  • 筑摩書房