さるこぞう
猿小僧

冒頭文

一 一人の乞食の小僧が山の奥深く迷い入って、今まで人間の行った事のない処まで行くと、そこに猿の都というものがあった。 猿の都は広い野原と深い森に囲まれた岩の山で、その岩には沢山の洞穴(ほらあな)が出来ていて、まるで大きなお城のようになって、その中に沢山の猿が住まってキャッキャと騒ぎまわって日を送っているのであった。乞食小僧がそこへ来ると、猿共は人間を珍らしがって大勢まわりに集ま

文字遣い

新字新仮名

初出

「九州日報」1920(大正9)年1月

底本

  • 夢野久作全集1
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1992(平成4)年5月22日