りょうきうた
猟奇歌

冒頭文

殺すくらゐ 何でもないと思ひつゝ人ごみの中を濶歩して行くある名をば 叮嚀(ていねい)に書きていねいに 抹殺をして焼きすてる心ある女の写真の眼玉にペン先の赤いインキを注射して見るこの夫人をくびり殺して捕はれてみたしと思ふ応接間かなわが胸に邪悪の森あり時折りに啄木鳥の来てたゝきやまずも *     *     *此の夕べ可愛き小鳥やは〳〵と締め殺し度く腕のうづくもよく切れる剃刀を見て鏡をみて狂人のごと

文字遣い

新字旧仮名

初出

「探偵趣味」1927(昭和2)年8月、「猟奇」1928(昭和3)~1932(昭和7)年、「ぷろふいる」1933(昭和8)~1935(昭和10)年

底本

  • 夢野久作全集3
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1992(平成4)年8月24日