わらうおしおんな |
笑う唖女 |
冒頭文
「キキキ……ケエケエケエ……キキキキッ」 形容の出来ない奇妙な声が、突然に聞こえて来たので、座敷中皆シンとなった。 それはこの上もない芽出度(めでた)い座敷であった。 甘川(あまかわ)家の奥座敷。十畳と十二畳続きの広間に紋付(もんつき)袴(はかま)の大勢のお客が、酒を飲んでワイワイ云っていた。奇妙な謡曲を謡(うた)う者、流行節を唄い唄い座ったまま躍(おど)り出しているもの
文字遣い
新字新仮名
初出
「文芸」1935(昭和10)年1月
底本
- 夢野久作全集4
- ちくま文庫、筑摩書房
- 1992(平成4)年9月24日