クチマネ
クチマネ

冒頭文

美代子さんは綺麗な可愛らしい児でしたが、ひとの口真似をするので皆から嫌われていました。 或る日の事、美代子さんはお家(うち)の前でたった一人で羽子(はね)をついていますと、一人の支那人が反物を担いで遣って来て、美代子さんのお家(うち)の門口で、 「奥さん、旦那さん、反物入(い)りまションか」 と言いました。美代子さんはカチリカチリと羽子をつきながら、 「入りまショんよ」

文字遣い

新字新仮名

初出

「九州日報」1923(大正12)年1月

底本

  • 夢野久作全集1
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1992(平成4)年5月22日